街路樹のすゞかけ

「マア、それは、でも……御道順でございますか?」「いゝえ後返りですが、僕はひま[#「ひま」に傍点]ですから帰りましよう」「済みませんわ、そんなにして戴いて……」 街路樹のすゞかけ[#「すゞかけ」に傍点]がさわさわと谷村さんの頭の上で鳴つていました。谷村さんは凉しい風に何気なく帽子を取りましたが...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 11:45 am  

夏中愛読した唐詩選

 谷村さんは、夏中愛読した唐詩選の中の、李白の詩を心よげに口ずさんで歩きました。 下宿から学校までは、五町あまりのものでありましたが、大変谷村さんには腹具合のいゝ散歩で、その学校までの道筋には、麻雀荘だの、安カフエー、古本屋、魚屋、床屋、玉突場なぞ何か安直な肩の張らない店が、煤けて並んでいました。...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 11:45 am  

下女はさつと顔を赤らめて

「なぜ?」「でも……初めて越して来た方は眠られないものだそうでございますよ」「そうかね僕はよく寝られた」 谷村さんはグッと押し上げる不快さを隠して、太つちよの下女がそろえてくれた靴に足をかけました。と、まだその下女は朝の髪に櫛を入れないのでありましよう、蓬々として、朝風に何日も洗わない臭い匂い...

このエントリーの続きを読む≫

— posted by id at 11:44 am  

T: Y: ALL: Online:
Created in 0.0105 sec.

http://aweb1.org/