女のひとの眼

 女のひとの眼は空の色を写していたせいか、美しく、またなくなまめかしく谷村さんの心をかすめました。 谷村さんは、下宿の下まで来ると、またきびすを返して、女のひとに別れました。

 3 もう、街にはあの谷村さんの好きな、夕暮の燈火がつきそめていました。谷村さんは、さらに声高く李白の詩をうたつて、下宿...

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街路樹のすゞかけ

「マア、それは、でも……御道順でございますか?」「いゝえ後返りですが、僕はひま[#「ひま」に傍点]ですから帰りましよう」「済みませんわ、そんなにして戴いて……」 街路樹のすゞかけ[#「すゞかけ」に傍点]がさわさわと谷村さんの頭の上で鳴つていました。谷村さんは凉しい風に何気なく帽子を取りましたが...

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夏中愛読した唐詩選

 谷村さんは、夏中愛読した唐詩選の中の、李白の詩を心よげに口ずさんで歩きました。 下宿から学校までは、五町あまりのものでありましたが、大変谷村さんには腹具合のいゝ散歩で、その学校までの道筋には、麻雀荘だの、安カフエー、古本屋、魚屋、床屋、玉突場なぞ何か安直な肩の張らない店が、煤けて並んでいました。...

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